2014年4月16日水曜日

第3回 オキュパイ運動のローカリティ

前回までの記事はこちらからどうぞ:
第1回 オキュパイの現場 


☆諸事情により半年間塩漬けになってしまいましたが、この第3回は2013年9月のインタビュー記事です。
オキュパイって?ジェネラル・アッセンブリーって?と思ったら、第1回を読んでみてください。

Aya: 今日は,917日(2013年)、ズコッティ公園(*1)で開催された、オキュパイ・ウオールストリート(Occupy Wall Street、以下OWS)の集まりである、2周年ジェネラル・アッセンブリー(General Assembly、以下GA)に行ってきたので、それについて話したいです。

           当日の公園内の様子。右側にOccupyとあるのがジェネラル・アッセンブリー。Aya撮影。

Jiro: ズコッティ!そういえば今、あやさんはNYにいますからね。どのくらい来てましてた?

A: 意外に人がいなくて、100はいたけど、200はいなかったです。当日は一日中、いろんなイベントやっていたんですが、夕方からのロビンフッド税のデモ(*2)が数千人と盛り上がり、国連からブライアント公園まで歩いたあと、公園でイベントもやっていたそうで、そっちに人がいったという事情もあり。またその場にいた人によると、2周年GAは、オーガナイズもイマイチ、だったかもしれません。

J: Occupy Wall Street GAのサイトみても、更新が去年で止まってますね。

A: あまりアクティブじゃないのかも。夜9時前くらいから輪になって皆がスピーチし始めて、これがGAだなってわかったんだけど、ジローさんが言っていたとおり、リーダーシップなかったです。なんとなく始まって。でもファシリテートはどうだったのかなあ、そんなに活気はなかったな。

J: ポートランドのGAは今だに場所を変えながら毎週やってますよ。今では毎回の参加者が10人いないくらいのようですが。でも、もしかしてニューヨークよりポートランドの方がアクティブなのかな。

A: うーん、GAに関して言うとネットで見る限りはそうですね。(*3)同じオキュパイと名乗っていても、これって本当にローカルなもので、地域によって全く違うんだな、って思います。

J: そう。地域差といえば、2年前の当時、各都市同士のオキュパイで連携しようしたんですが、だめでしたねー。電話がつながらないんですよ。メールも返って来ないし。

A: む。それってやっぱりオキュパイの組織が緩いからかしら。

J: 理由はいくつかあると思っています。まず、自分の運動で精一杯で、横の連携どころじゃないということ。次に、オキュパイ運動の内側がカオスなので、こういった連絡事が弱い。また、自分の見たところ、運動家には「関係性の筋肉」(*4)が弱い人が多いような気がしています。あとは、ウェブサイトに連絡先を書いた人が途中でいなくなったりポジション変わったり、という事情があると思っています。

A: 全米各地に飛び火したオキュパイですけど、実はとことんローカルなものだったんですね。

J: そう言えるでしょうね。そういえば、ポートランドも2周年に向けて警察が既に公園を柵で囲って封鎖しちゃってますね。今でもアクティブだから警戒してるのかもしれません。

A: え、もう!まだ2週間前なのにね。当日のズコッティ公園も柵で囲まれていて、2箇所ある入り口がちょっと開いているだけ。その周りに大量の警察が立っていて、緊張しました。ただ、私の周りの人たちは、今までで一番警察が大人しいから何もないよ、雰囲気が悪くなってきたら逃げればいいって言っていて、確かに、私が去る10時頃には警察の態度も緩くなっていて。私としては、安全第一なので良かったです。

J: 2周年のGA現場を見て、私の話と違うな、ってことありました?

A: そんなに違わなかったです。
そこまで全体の盛り上がりがなかった分、来ていた人と密に話す機会が持てたんですけど、やっぱり、みんなの話にコミュニティ感覚があるんだな、っていうのが大きいですね。

J: どんな人と話したんですか?

A: オキュパイ初期から食事の配給していた人たちが今回も食事を配っていて、ブースを閉めた頃に話しました。それからネイティブ・アメリカンの運動家(*5)、あとそこまでアクティブじゃなくても当日からフラッと来ていた人とかかな。あ、それと、2年前のオキュパイ・ポートランドで初日からキャンプしててメディアのチームにいたというロースクールの学生に会いましたよ。彼は、警察が理不尽な暴力を行わないか監視する学生ボランティアをしていました。(*6)本当に多様でしたね。

直感的にポートランドと違うと思ったのは、警察がなかなかに威圧的でした。まず8時に着いてすぐ、公園前でパンフレットを配布しているブースの人と話したんですが、彼らの仲間はそのちょっと前に逮捕されたそうです。場所が悪いからと、頭を押さえつけられて。でも、そこから3m離れたところで同じことしてるのは警察的にはokみたいなんです。なんだか理不尽ですよね。
あと入ってすぐ、警察にビビった私が話しかけた女性によると、警察がダメって思ったら逮捕される、そういうものだ、と。私はこういう事情に明るくないので、ショックでした。

J: 警察官は裁判長ではないので、政治的に法律を破る必要があればやりますよ。その上部にある行政側の意向を反映します。つまり、ポートランドの市の警察官の一番上の上司が市長と言えます。(*7)

A: えー!法律破るって。

J: また、good cop bad cop がいるということもありますね。「悪い警察」は、ホームレスみたいに比較的力を持たない人たちにたいして圧力行為を行ったりしますよね。監視の目が働いている市民団体なんかにはそんなに圧力かけない。
あと、警察の中に怒りのコントロール/感情コントロールができない人が一定数いますね。そういう人がやっちゃう可能性もあります。
そういう警察官がいても、悪い事が重なると組織内で警告を受けるなりして排除されていく方向だと思います。

A: でも、街によって警察のカラーって結構違わない?例えばオークランドはかなりキツかったと思うんだけど。

J: イジメ的な手法を使う警察もありますよ。シアトルなんかが有名ですね。
ポートランド警察はそこまでではないです。高度な対話型の訓練を受けている人もいます。警察官の家族を持つ人がオキュパイ内部にいて、警察と話す対話連絡係をしてましたね。

A: ニューヨークは対話型じゃないだろうなー。記録を見ても、手強い印象です。OWSの方は、逮捕された仲間を出す為の保釈金の予算がかなりあったでしょうね。

J: そうですね。橋の上でだまし討ち逮捕700人とかありましたからね。(*8)そういうことはサム・アダムス(当時のポートランド市長)はしなかったですよ。
また警察ネタはしっかり話したいと思いますが。

A: ニューヨークのブルームバーグはなかなか強硬姿勢だったみたいね。あと、ウオールストリートの会社がだいぶ警察にお金を使ったみたいですね。(*9)
警察の出方がこれだけ違うと、運動の有り様もかなり違うものになると想像します。あと、市長の態度。私がズコッティで会ったポートランド出身の学生曰く、「ポートランドの政治家はベストだ」そうで。

J: そうですね。まず、警察は市長のサム・アダムスがやれと言えばやるし、やるなと言えばやりません。そして、サム・アダムスはオキュパイを「表現の自由」、「集会の自由」を守るという姿勢で支持していましたから、警察の態度も他の都市とは違ったんです。
あと、夜12時以降に公園にいるだけで逮捕したら予算の無駄遣いですしね。

政治家全般ということで言うと、90年代の夢( *10 )であるエコロジカルで持続性のあるポートランドを実現してきた政治家達がいますからね。


A: あと、地域差ということでいうと、Occupy Wall
Street初日からフード担当していた黒人のおばちゃんと話したんですが、ニューヨーク市のルールでは、余った食材の提供は禁止されていたそうです。なので、彼女は常にかなりの予算を持っていて、安い食材を求めてチャイナタウンを走り回っていたとか。ニューヨークのOWSはかなり予算が動いている運動だったようですね。

J: 以前お話した通り、ポートランドは、食べ物関係はかなり恵まれてましたね。

A: うん。食事の話題はいつ聞いても想像すると楽しくなる部分です。今でもユニオンスクエアでオキュパイのフード隊の人が食事サービスしている(*11)とのことなので、今度行ってみようと思います。
今回は各地の運動のローカリティについての雑談でしたけど、次回は、共通のところ、オキュパイとは何だったのか、について話したいと思います。ありがとうございました!


注、およびハミダシつぶやき

(*1)Occupy Wall Streetではニューヨーク・マンハッタン南部の金融街、Wall Streetにあるズコッティ公園(別名:リバティ・スクエア)を占拠した。隣接するワン・リバティ・プラザがパブリックスペースとして整備している「民間による運営」の公園。オキュパイ開始時は、ギリギリまでどこを占拠するか決まっていなかったが、ズコッティ公園が夜間もオープンである、排除される可能性が低いといった理由で決められた。
行ってみると意外に小さいものの(3100m2)、高層ビルだらけのウオール・ストリートにおいては貴重な憩いスペース。

(*2)2周年当日は5時からNY国連本部のダグ・ハマーショルド・プラザにて、金融取引を課税する「ロビンフッド税」導入を求める集会及び、ワシントンスクエアパークまでの行進がメインイベントとなった。
当日のアクションスケジュールはこちら。http://occupywallstreet.net/story/events-and-s17

(*3)Occupy Wall Street General Assembly のページ:http://www.nycga.net/ 
相互リンクのある、Occupy Wall Streetのページ http://occupywallstreet.net/
「オキュパイ」運動自体は2012年で一段落し、その後は、オキュパイ前から存在していた、またはオキュパイにインスピレーションを得て始まった各種デモ/運動の情報とそれに伴ったジェネラル・アッセンブリーの情報の掲示板があります。が、OWSとしてのGA(ジェネラル・アッセンブリー)の情報は載らないままです。ポートランドでは今でも「オキュパイ・ポートランド」としてのGAをやっています。
ただし、2014年4月4日、キング牧師の命日に新しく"Wave of Action"という分野横断の運動が全米各都市で始まった模様。ズコッティ公園でもGAが開催されました。どのように展開するかはウオッチしていきたいと思います。
 
(*4)「関係性の筋肉」とは、関係性にまつわるスキルのことで、ファシリテーターであるジローさんならではの言葉です。人間関係において何が起こっているのかが、「見えている人」「見えていない人」がいるという状況をわかりやすくするためにも、筋肉という言葉を使っているそうです。
「ファシリテーター」というお仕事に関しては、第1回をご覧ください。http://occupynimanabu.blogspot.com/2013/08/blog-post_16.html

(*5)「ネイティブ・アメリカン」という言葉が「正しい」と思って使っていましたが、これは実は白人によって作られた言葉であり、当事者によっては、「は?ネイティブアメリカン?誰の事?」と言う事もあるそうです。ジローさんの経験によると、「インディアン」そしてインド人と区別する場合に限り「アメリカン・インディアン」と自分の事をいう人が多いそう。今回の記事では、私が「ネイティブ・アメリカン」と話題に出しても話し相手の運動家の方がそれを直さなかった、ということで「ネイティブ・アメリカン」と書いています。当事者と話すときは、「本人がどう呼ばれたいか」を毎度聞くのがベストですね。実は今後もでてきますが、アメリカン・インディアンの人たちの文化をオキュパイでは参考にしています。

(*6)日本でも、首相官邸前抗議やレイシストのデモに対するカウンター行動において似たようなボランティアの弁護団がいると、現場の方に教えてもらいました。

(*7)日本の場合は、都道府県別で、都知事など首長が警察組織のトップ。
参考:http://www.npa.go.jp/koho1/sikumi.htm (警察庁HP)

(*8)10月1日、平和にブルックリン橋をマーチしていた市民が700人逮捕されるという事件が起こりました。ブルックリン橋のマーチは昔からNYの市民運動の伝統のように行われてきたことであり、そのような平和なマーチに対し、警察は橋を監視するように見せかけて突然前後をブロックして700人一気に逮捕!したわけで、「だまし討ち」事件としてNY警察の悪評を高めました。

(*9)JPモルガン・チェースは、OWS中、460万ドルをNY警察に寄付。ブルックリン橋の700人逮捕がそのニュースの直後だったため、警察とウオールストリートとの癒着が噂されました。ちなみに、あくまでも噂ですが、有名投資家ジョージソロスがOWS(オキュパイ側)に資金提供という噂もあります。

(*10)ポートランドならではのネタ満載で人気のコメディ「Portlandia」では、「90年代の夢」をテーマにした回があります。90年代に夢見ていたことがポートランドではまだ現実にあるんだよ!という話。
https://www.youtube.com/watch?v=AVmq9dq6Nsg

(*11)Occupy Union Square:http://occupyunionsquare.net/ 
このように、オキュパイ運動の参加者はそれぞれが様々な形で今でも活動しています。1つの視点は、昔からの活動家がオキュパイに集まった、もう1つは、オキュパイをきっかけに生まれた活動が今も続く、その結節点のイベントとしてのオキュパイ、という見方もあるのですが、詳しくは次回に!